【あらすじ】
東京都心の超高層ホテルのエレベーターの中で、米国から来たジョニー・ヘイワードという黒人青年が胸をナイフで刺されて殺された。殺害現場に残された古い麦わら帽子、ジョニーがホテルに向かうタクシーの中で残した「ストウハ」という言葉、空港からホテルに向かうタクシーの中に置き忘れた西条八十の詩集、そして来日前「日本のキスミーに行ってくる」という言葉をアパートの管理人に残していること、これら少ない手がかりをもとに棟居刑事ら捜査陣は殺人犯を追う。
〈母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
ええ、夏碓井から霧積へ行くみちで、
谿谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき向ふから若い薬売りが来ましたつけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとしてずいぶん骨折つてくれましたつけね。
だけどたうたうだめだつた。
なにしろ深い谿で、それに草が背丈ぐらゐ伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子はどうなつたでせう?
そのとき傍で咲いてゐた車百合の花は、
もうとうに枯れちやつたでせうね、
そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そしてきつと今頃は
今夜あたりは、あの谿間に、静かに雪が降りつもつてゐるでせう。
昔、つやつや光つた、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに、寂しく〉
ところで映画版の方ですが、キャストをみるとそうそうたるメンバーが名を連ねています。主人公棟居刑事に松田優作、そのほかに岡田茉莉子、岩城滉一、竹下景子、三船敏郎、鶴田浩二等々。小説は2回読みましたが、映画はまだ見たことがないので、近々見たいと思っています。


