2013年02月21日

『東西ミステリーベスト100』――ミステリーマニアのぼやき――

 先日本屋をブラブラ歩いていたら、週刊文春臨時増刊の『東西ミステリーベスト100』を発見して、即購入しました。実は私が高校生のとき、『東西ミステリーベスト100』の第1弾が発売されて、今でも大切に保存して読んでいるので、その新作が出たことは大変な喜びなのです。旧版が出たのが1986年ですので、27年ぶりの復活です。帰宅後、ワクワクしながらページをめくりましたが・・・胸のときめきは徐々に失望に変わっていきました。
 私が期待したのは、自分がまだ読んでいない上質のミステリーを発見することでしたが、上位作を見ると、海外・国内ともにあまり顔ぶれが変わっていません。それは言い換えるとアガサ・クリスティや横溝正史などが偉大すぎるということでしょうが、ファンとしては彼らを超える逸材に出会いたいというのも偽らざる心境です。またトリックのネタがほぼ出尽くしたということもその原因かもしれません。

 以下で旧版・新版を見比べながら、私が読んだ本の中でお勧めのものを紹介したと思います。
★海外編★

【お勧め】
▲結末がすごい!
アガサ・クリスティの全ランクイン作品
コナン・ドイルの全ランクイン作品
『幻の女』ウイリアム・アイリッシュ(旧版2位、新版4位)
『さむけ』ロス・マクドナルド(旧版24位、新版15位)
『僧正殺人事件』ヴァン・ダイン(旧版9位、新版18位)
『ギリシア棺の謎』エラリー・クイーン(旧版54位、新版23位)
『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー(旧版16位、新版28位)
『モルグ街の殺人』エドガー・アラン・ポー(旧版36位、新版34位)
『エジプト十字架の謎』エラリー・クイーン(旧版31位、新版42位)
『ブラウン神父の童心』G・K・チェスタトン((旧版24位、新版8位)
※一言:ドンデン返しを重視した古典本格推理物は、事件発生から結末までの過程が非常に冗長になる傾向にあります。途中の退屈さを耐えて、何も考えないで読むことをお勧めします。きっと最後にいいことがあるでしょう。

▲スリルとサスペンスで本が手放せない!
『長いお別れ』レイモンド・チャンドラー(旧版3位、新版6位)
『さらば愛しき女よ』イモンド・チャンドラー(旧版13位、新版79位)
『死の接吻』アイラ・レヴィン(旧版17位、新版13位)
『鷲は舞い降りた』ジャック・ヒギンズ(旧版5位、新版19位)
『深夜プラス1』ギャビン・ライアル(旧版6位、新版25位)
『シャドー81』ルシアン・ネイハム(旧版15位、新版32位)
『警察署長』スチュアート・ウッズ(旧版141位、新版40位)
『木曜の男』G・K・チェスタトン((旧版122位、新版ランク外)
『羊たちの沈黙』トーマス・ハリス(旧版ランク外、新版9位)
『レッド・ドラゴン』トーマス・ハリス(旧版ランク外、新版85位)
※一言:すでに紹介したものを除くと、『死の接吻』『シャドー81』はトイレに行く間を惜しむほどのめりこみました。『警察署長』は大河小説です。トーマス・ハリスについては個人的には『レッド・ドラゴン』の方がおもしろかったです。これはレクターシリーズの第1弾です。『羊たちの沈黙』は映画のイメージが強いですね。素晴しい映画でした。海外の作家は異常人格のキャラクターを描くのが巧みです。

 ランクインしている作品の中で、個人的におもしろくなかったものもたくさんあるので列挙しようと思いましたが、長くなるのでやめておきます。
★国内編★

【お勧め】
横溝正史の全ランクイン作品
江戸川乱歩の全ランクイン作品
『ドグラ・マグラ』夢野久作(旧版6位、新版4位)
『刺青殺人事件』高木彬光(旧版10位、新版32位)
『ゴメスの名はゴメス』結城昌治(旧版18位、新版ランク外)
※一言:横溝の『獄門島』、乱歩の『孤島の鬼』は特にお勧めです。国内版は読んでいる絶対数が少ないので、私の意見はあまり参考にならないでしょう。むしろ駄作だと思った作品がずらりと並んでいました。『黒死館殺人事件』『虚無への供物』は『ドグラ・マグラ』とともに三大奇書と呼ばれていますが、今ひとつです。坂口安吾の『不連続殺人事件』もなんでランクインしているのか不思議です。

★映画との関係★
 ミステリーの名作の多くは映画化されていますが、成功している作品は『羊たちの沈黙』などごく一部です。

【アガサ・クリスティの映画】
 クリスティの名作に『検察側の証人』という戯曲があります。なぜランクインしていないのか不思議です。そしてこの戯曲を映画化したのが『情婦』です。日本語のタイトルだけではわかりませんが、映画がはじまって原題が流れると、クリスティの原作じゃないか、と気づきます。この映画は非常によくできていてお勧めです。白黒映画ですが。タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒなど、すでに伝説と化した名優たちが登場します。もっとも古い映画なので、途中はやはり冗長で退屈ですが、結末は保証できます。


【金田一耕助シリーズ】
 昭和50年代に石坂浩二の主演で金田一耕助の映画が数本製作されました。一番有名なのは『犬神家の一族』(スケキヨが出てくる)ですが、このシリーズの最高傑作は『悪魔の手毬歌』と言われており、私もこれが一番のお気に入りです。磯川警部を演じる若山富三郎の迫真の演技、巧みなカメラワークなどが実に見事で、犯人はすぐにわかりますが、それを補って余りある魅力があります。『悪魔の手毬歌』もそうですが、横溝正史は血縁を使うのがうまいですね。


 また金田一耕助は出てきませんが、横溝正史の超短編集『山名耕作の不思議な生活』が途方もなくおもしろいです。ところが角川文庫では横溝作品がどんどん絶版になり、『山名耕作の不思議な生活』も絶版の憂き目にあっていますが、なんとか復刻してほしいものです。私の持っている文庫はあまりに古いので、紙が茶色に変色して字が読みにくくなってしまっています。
posted by つばさ at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 随筆 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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