2013年07月21日

タイムマシン・タイムトラベルの可能性について

 今回は『タイムマシンがみるみるわかる本』(佐藤勝彦監修、PHP研究所)を読んで、タイムマシン、タイムトラベルについて考えてみました。この本は薄くて非常に読みやすく、しかしあまりに読みやすいので「子供向けの本か?」と疑うほどでした。当然、数式や高度な概念はすべてカットされています。少し物足りない気もするので、簡単なアウトラインだけこの本でつかんで、そのあとちょっと高度な本を読むといいと思います。

 相対性理論によって、動いている時計は止まっていて時計に比べてゆっくり時を刻むことがわかりました。そして重力を受けた時計もまたゆっくりと時を刻みます。したがってなにもない真空の宇宙空間に漂う物体よりも、地球上にある物体の方が時間はゆっくりと進みます。
 たとえばカーナビで使われているGPSというシステムは、この2つの原理に基づいて時間の補正を行っています。GPSは高度2万メートルの軌道上を半日で周回する複数の人工衛星から電波を受信し、現在位置を把握するシステムです。カーナビの受信機がGPS衛星からの電波を受信すると、電波の発信時刻と受信時刻の差からGPS衛星までの距離がわかります。GPS衛星の位置は事前に正確にわかっています。するとそれらの情報から、三角測量の手法を使って、自分の位置が数十メートル単位で正確に割り出せます。
 GPS衛星は高度2万キロメートル上空を秒速4キロメートルという高速で動いているので、「動いている物体の時計は遅れる」という法則に従って、カーナビを正確に作動させるには若干の時間の補正が必要です。また地上には重力がかかっているので、GPS衛星に比べて若干時間に遅れが出ます。この双方の時間のずれ(遅れ)を計算すると、衛星の時計より地上の時計の方が毎秒10億分の4.45秒だけ遅れて進むので、GPSシステムがそれを補正して正確な位置情報をユーザーに提供しているのです。
 意外に身近なところで相対性理論が使われているのだな、と思ったら、このGPSシステムは元々軍事用に開発されたもので、その目的は地上の対象物の位置を数メートル単位で割り出すことにあったようです。恐ろしい話ですが、軍事用に開発された技術というのは世界最先端の技術ですので、随時民間に転用されれば非常に有意義な使い方ができます(もっともそんなことは国家機密の関係で絶対無理ですが)。

gps1.jpg

 ある天体の表面における重力というのは、その天体が重ければ重いほど、そして高密度であればあるほど強くなります。そしてもっとも重力が強い物体(天体)がブラックホールです。ブラックホールの巨大な質量をささえているのが、想像を絶する密度です。ある試算では1cm3あたり180億トン、つまり超巨大タンカーを砂粒1個に押し込めるほどの密度があるといわれていますが、実際はそれ以上のようです。ブラックホールは光も吸収し、内部では時間が止まっていると言われています。
 ブラックホールの例は極端ですが、高速で動く物体の内部の時間は遅れる、そして強い重力場にある物体の時間は遅れる、この2つを利用すると、未来へのタイムトラベルは理論的にはそう難しい話ではないようです(実現可能かどうかは別問題)。

【過去へのタイムトラベルは果てしなく難しい】
 一方で、過去へのタイムトラベルは困難を極めます。光速を超える速度で運動しなければ過去へはいけません。しかし相対性理論の「E=mc2」の方程式が示す通り、物体が光速に近づけば近づくほど質量が増大し、光速で運動すれば質量は無限大になってします。

 一部の科学者の間では、光より速く動く「タキオン」という粒子が存在するのではないかと考えられています。タキオンは元々光より速く運動しますが、その速度には下限値があり、光速以下に減速することができません。なぜタキオンがこのような性質をもつのかというと、虚数の質量をもつからです。もちろんこの本では詳しい説明は省かれていますが、理論上はまったく問題ないそうです(その存在はまだ確認されていない)。本書では「タキオンを材料にした乗り物を作り、光以上の速さで移動すればいいのです」と簡単にいってくれていますが、タキオンの実在が確認されたとして、いったいどうやってそれを捕捉して乗り物の材料にするのか、まったく説明がありませんでした。

 またワームホールを使って過去へ行けると考える科学者たちもいます。ワームホールとは宇宙空間で離れた2点間をほぼゼロ秒で瞬間移動できるトンネルのようなものです。なぜワームホールを通ると瞬間移動できるのかというと、ワームホールの内部には非常に強い重力が働き、時間の進み方が極端に遅くなっているからです。
 ただしワームホールの内部は巨大な重力が働くため、通路ができても一瞬でつぶれてしまいます。もちろんそのままの状態で人間が中に入れば、つぶれてしまいます。したがってエキゾチック物質と呼ばれる物質を注入して通路がつぶれるのを防ごうというアイデアがあります。普通、質量をもつ物質は引力をもっていますが、エキゾチック物質はマイナスの質量をもつため、斥力(反発力)をもつと考えられています。

ワームホール.jpg

 しかし上記の方法で仮にワームホールが通行可能になったとしても、ワームホールを使った過去へのタイムトラベルはあまりに壮大なものになります。片方の入り口を光並みの速度で動かして、もう片方の入り口との時間差を作るというのですが、とても実現可能には思えません。他に宇宙ひもを使ったタイムトラベルも紹介されてますが、同じく壮大で現実味がありませんでした。
 まずは光速に近い速度を出せる乗り物を作るところからはじめないと、タキオンやワームホールなど絵空事にすぎないでしょう。

【時間の流れる方向】
 力学(電磁気学を含む)の法則は時間反転に関して対象です。
例:ビリヤードの台の上で白い手球をキューで撞き、台上の的球に正面からぶつける(摩擦や空気抵抗はゼロとする)。するとぶつけられた的球は勢いよく走りだすが、ぶつかった手球はその場に止まる。この様子をビデオに撮影し、逆回しで再生する。すると的球が止まっている手球に当たり、手球が走りだして的球が止まるという映像が流れる。この映像を見ても、これが逆回しであることに気付く人はいない。
 したがって物理法則では過去と未来を区別できないことになります。
 しかし実際には私たちは非可逆現象が身の周りにたくさんあることを知っています。例えば地面に落ちて割れたコップの映像を逆回しにしても、それが逆再生だと気がつかない人はいません。
 実は非可逆現象の陰には必ずが関係しています(ビリヤードの例は摩擦や空気抵抗はゼロとするという過程に落とし穴がある。地上でこの実験を行うと必ず熱が発生する)。
 様々な物理法則の中で唯一、熱力学だけは時間反転に関して対称ではないのです。
 熱が関与する現象の中には保存されず(「保存の法則」が成り立たず)、時間がたつと変化する量があります。その量をエントロピーと呼びます。エントロピーとはエネルギーの質をあらわす量で、保存則が適用されず、時間がたつと変化するものです。
例:熱湯と水を混ぜる。
・熱湯と水を混ぜる前(熱湯と水が分離している):エントロピーが低い、エネルギーの利用価値が高い
・熱湯と水を混ぜた後:エントロピーが高い、エネルギーの利用価値が低い
◆乱雑さを表すエントロピー
 エントロピーとは「乱雑さ」を表す指標でもあります。熱湯と水を混ぜる前は乱雑さが低く、混ぜたあとは乱雑さが高くなります。熱湯と水を混ぜるとぬるま湯になりますが、ぬるま湯が自然と熱湯に分離することはありません。エントロピーに注目すると、エントロピーは低い状態から高い状態へと変化しています。これをエントロピー増大の法則といいます。
 時間の経過とともに変化する量がエントロピーであり、エントロピーの低い状態が過去で、高い状態が未来ということになります。エントロピー増大の法則は私たちが過去と現在を区別できるよりどころです。

【補足:ゾウの時間とネズミの時間】
 タイムトラベルとはあまり関係がありませんが、『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川達雄著、中公新書)から時間に関しておもしろい話が本書で引用されていたので、ご紹介いたします。
 様々な動物を見てみると、サイズの大きな動物ほど長生きする傾向にあります。これについて本川氏は心臓の拍動(心拍)の周期に着目しました。人間の心周期は1分間に約60回、つまり約1秒です。一方ハツカネズミは1分間に600回も拍動するので、心周期は0.1秒です(馬は2秒、ゾウは3秒)。
 心周期と体重の関係を調べると、心周期は体重の4分の1乗に比例していることがわかります。他の生理活動や寿命までも体重の4分の1乗に比例しています。
 心周期も寿命も体重の4分の1乗に比例するので、寿命を心周期で割ると体重によらない定数が求められます。それは「15億回」という数値で、心臓が15億回拍動すると、哺乳類は寿命を迎えるのです。同様に寿命を呼吸の周期で割ると「3億回」という定数が求められ、3億回呼吸をするとどの哺乳類も死を迎えることになります。
 本川氏はこれについて「心拍を時計と考えると、ゾウもネズミも同じ長さだけ生きて死ぬ」、つまりゾウにはゾウの時間、ネズミにはネズミの時間と、サイズに合わせた別々の時間単位をもっているのだ、と述べています。
 本川氏は心周期や寿命といった時間が体重の4分の1乗に比例する理由について、エネルギー消費率が関係しているのではないかという説を唱えています。体重あたりのエネルギー消費率を調べると、体重のマイナス4分の1乗に比例します。そして時間とエネルギー消費率をかけると、体重によらない一定値が求められます。たとえば寿命にエネルギー消費率をかけると15億ジュールという値になります。ゾウもネズミも1kgあたりで15億ジュール分のエネルギーを使うと寿命を迎えるのです。どの動物にも均等に与えられたエネルギーを、ネズミは激しく早く使い、ゾウはゆっくり長く使っていることになります。

posted by つばさ at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 随筆 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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